29Jul
飛距離20%UPを謳って登場した、新開発のMGLスプール。
しかしその自重は、何と旧モデルより重い!?
なのに明らかに飛ぶ不思議を、実測にて徹底検証。
16メタニウムが起こした、静かなる革命をシェアします。
KenDの敗北
皆さんこんにちは、KenD(けんでぃ)です。
以前ご紹介したように私は13メタニウムマニアで、現在5台所有しています(笑)。
しかし今年、そんな私の心を揺さぶる衝撃のNEWリールが発売されました。
そう、皆さんご存知の“16メタニウムMGL”・・・。
13メタニウムの後継に当たるモデルです。
主要なアップデート項目を挙げるだけでも、
・MGLスプールの採用により、軽量ルアーの飛距離が大幅に向上
・外部調整ダイヤルだけで調整可能な完成型SVS∞ブレーキシステム
(しかもオイルを切らしても異音が出ない)
・サイレントチューン採用
・・・と、数少ない13メタニウムの欠点を見事に埋めてきました。
おそらくその完成度の高さは、オールマイティー・ベイトリールとしてほぼパーフェクトの内容である事は、想像に難くありません。
しかし上の記事にも書いたように、私自身は決してこのリールを買うまいと決めていました。
前モデルからの早過ぎるマイナーチェンジ・・・5台も所有している以上、簡単に総入れ替え出来るわけがありません。
しかも13メタニウムとのスプールの互換性も失われてしまいました。
これでは1台だけ入れ替えても、他のリールとスプールを使い回す事が出来ません。
別途購入した夢屋ベイトフィネススプールも使えないわけで、そんな不便な事はさすがに出来ないと憤慨していたのです。
しかし・・・
皆さまごめんなさい・・・私、負けました。
16メタニウム発売以来、周囲から降り注いだ「すごく良いよ!」「買わなきゃ損だよ」「ていうかまだ試してないの?」・・・といったプレッシャーの嵐(笑)。
果たしてそんなに違うのかと、ついにamazonでポチってしまったのです・・・(泣)。
というわけで16メタニウムMGL、そんなに素晴らしい出来なのか?・・・と、不信感丸出しで辛辣に見たレビューを、これからちょくちょく書いていきたいと思っています(笑)。
まず今回はメインとなる新機構、“MGLスプール”のインプレッションからスタートです。
実は重い!?MGLスプール
さて、今回のアップデートの目玉として採用された“MGLスプール”。
シマノさんの説明では、
これまで技術的に不可能とされてきたスプール側面へのブランキングに成功。(中略)実に約20%の飛距離アップをマークしました。
・・・と自信満々。
スプールの慣性が減った事で、特に軽量ルアーのキャスタビリティは大幅に向上!と高らかに謳っています。
ではスプール側面に穴開け加工をした事で、一体どれだけ軽量化出来たのでしょうか?
実力拝見とばかりに、まずはスプール重量を計ってみます。
すると・・・
何と自重・・・14.1g!重い!重いですよ!
前モデルの13メタニウムでは、スプール重量は約12.6g。
初期慣性に影響する自重がこんなにも重くなっているとは、一体どういう事でしょうか!?
しかし落ち着いてみると、答えはスプール側面に隠されていました。
サイレントチューンが採用された事により、スプールがベアリング一体型に。
つまりこのベアリングが増えた分、見かけ上重量が増えたように見えたわけです。
ベアリングは回転部分の重量にカウントされませんので、その分スプール本体の自重は軽くなります。
しかしベアリング1個が仮に1g強だとしても、13g程度と13メタニウムより重いか同等程度の重さになる計算です。
果たしてこれで、本当に軽量ルアーの飛距離が伸びるのか?
かなり疑いを抱きながら、実釣に持ち込んでみました。
3/8ozクラスが嘘みたいに飛ぶ
しかし実際にフィールドでルアーを投げてみて、私はショックを受けました。
すぐに分かるくらいスプール回転の立ち上がりが早く、特に軽量ルアーの飛距離は目に見えてUP。
シマノが主張する「20%の飛距離アップ」が、確かに本当だと思える明確な違いを感じたのです。
特に3/8oz以下のクラスのキャスタビリティは、13メタニウムに比べ圧倒的。
サイドからオーバーハング奥に入れるような低弾道キャストも、明らかにやりやすくなっています。
多少言い過ぎかもしれませんが、まるでベイトフィネススプールを入れたかのような軽やかなフィーリングでした。
では一体なぜ、このように劇的な違いが出たのでしょうか?
その原因は、まず“ラインキャパシティ”にあるのではないかと予想しました。
16メタニウムの糸巻き量は14lb-90mと、13メタニウムより10%程度少なくなっています。
これに14lbのフロロカーボンライン(シーガー・フロロマイスター)を、ラインキャパシティの90%ほどである80m巻くと、スプール総重量は26.3gほど。
そこからベアリング分の1g強を差し引くと、16メタニウムの有効なスプール総重量は25.3g程度と推測されます。
(また、80m分のフロロカーボンラインの重量は約26.3-14.1=12.2g程度という事になります)
同様に13メタニウムに90%程度巻くとすると、ライン重量は10%増の約13.4g。
これにスプール自重の12.6gを足すと、13メタニウムのスプール総重量は約26gと言う計算になります。
つまりラインを含めた総重量で言えば、結局は16メタニウムの方が0.7gほど軽い事になるのです。
大切なのは、”スプール重量”だけではない
しかしスプール単体ならともかく、総重量の0.7gの差がそこまで影響を与えるものでしょうか?
そこで13メタニウムの下巻きに同じ太さのPEラインを10mほど巻いた上で、フロロカーボン80mを巻いてみました。
(PEラインの方が、フロロカーボンよりも比重が軽いので)
この場合のラインを含めたスプール総重量は、25.5g。
これで13メタニウムとの差は0.2gとなり、さすがにこれは誤差の範囲と言って良い数値ではないでしょうか。
しかしこの状態でキャストしてみた結果も、ほとんど変わらないものでした。
3/8ozのクランクだとスプールの回り出しが遅い13に対し、16のMGLスプールはまるでレーシングエンジンのように素早く回転が上がります。
ベイトタックルを使い慣れている方であれば、その差は“若干”では無く、1投で明らかに分かるレベルの違いだと思います。
(とはいっても、本格的なベイトフィネススプールほどではありません。1/4ozも投げられますが、心から快適とは言えないレベルだと思います)
という事はやはり、この劇的な違いが生まれる理由は“スプール側壁の穴開け処理”の効果と考えるべきではないでしょうか。
スプールは回転する時に遠心力がかかるために、「外周に近い」部分が重いほど慣性が大きくなります。
例えば中心部のシャフトが重くてもあまり影響が無い一方で、スプールの外側部分が重くなるほど、回り出しは重くなるはずです。
しかし、確かに理論上そうなるはずなのですが、そうは言っても最も影響が大きいのはスプール重量だろうと考えていました。
けれども今回、ほぼ同じような重さでも段違いの差が出るのを目の当たりにすることに。
これによって、あらためて「どこを軽くするか」の大切さを痛感した次第です。
スプール性能は、決して数値上の重さだけでは判断できない。
MGLスプールの登場によって、ベイトリールのチョイスは新しい時代に入ったような気がします。
シマノの方には大変失礼ながら、最初はカタログを賑わせる「飛距離20%UP!」の宣伝に疑いを抱いていました。
しかし3/8oz以下のルアーであれば、実用上本当に偽りない数値だと実感する事に。
さらに言えば1/2ozクラスでも10%の飛距離UPは堅いと思いますし、1ozのヘビーウェイトでも失速する感じを受けませんでした。
どうしても”13メタニウムの改良版”というイメージの付きまとう16メタニウムMGL。
しかしMGLスプールの登場には、ベイトリール史の転換点となる歴史的な技術革新の可能性を感じました。
13メタニウム・ユーザーとしては悔しい限りですが、この劇的な進歩にはシマノ開発陣に拍手を贈らずにいられません。
地味なマイナーチェンジに見える16メタニウムが実現した、華々しいまでの進化。
このリールが巻き起こした“静かなる革命”に、私もようやく気付き始めました。
次回はさらに使い込んでいく中で感じた、ブレーキシステムの進歩について書いてみたいと思います。
※ぜひFacebookページへのいいね!& twitter・Instagramのフォローをよろしくお願いします。
関連記事
-
2016年 8月 01日
-
2016年 8月 19日
-
2016年 8月 22日
-
2016年 10月 16日
-
2016年 12月 14日
-
2017年 1月 07日
-
2017年 3月 24日
-
2017年 6月 13日
-
2017年 12月 12日
-
2018年 1月 15日
-
2019年 1月 10日
-
2019年 4月 01日トラックバック:SHIMANO 16メタニウムMGL 買ってもうた | カケヅカ
-
2019年 8月 06日
毎日欠かさず、記事を拝見させていただいております。
本日の16メタニウムMGLの記事は、私も13メタニウムを愛用しており、過去に16メタニウムの購入を検討していたこともあったため、大変参考になりました。
ご存じのとおり、16メタニウムMGLは、外見は13メタニウムと大差がありませんが、内部構造が大幅に改良されているかと思います。
特に、13メタニウムの欠点であった巻き心地の悪さを改善させるために、ダイワのベイトリールと同様にメインギア軸をボールベアリングによる2点支持方式へ変更されております。
13メタニウムのメインギア軸は、フレームとメインギア軸の固定部分のボールベアリングとローラークラッチの2点だけで支持される構造になってます。この構造は、アブのレボシリーズのリールと同じです。
また、16メタニウムMGLのウォームシャフト部は、ウォームシャフトブッシュを740サイズのボールベアリングに変更できるため、ノーマルの状態よりも更に回転が滑らかになると思います。
そして、16メタニウムMGLは、ギア比毎にウォームシャフトの刃のピッチが異なっており、各ギア比でもスプールにラインが最適に巻ける様にされております。
さて、本題の16メタニウムMGLの飛距離について質問ですが、PEラインを使用する前提で、13メタニウムに夢屋のMG製BFSスプールベイトの組み合わせと比較すると、どちらが快適にキャストできますか?
私は、13メタニウムをソルトで使用することがあるため、塩に弱いMG素材を避け、KTF社のG1ジュラルミン製のNEOスプールを全てのリールに組み合わせております。
ちなみに、このNEOスプールは、PEライン(よつあみのG-soul X8 UPGRADE)の2号を100m巻く事ができるラインキャパがあります。
参考までに、このNEOスプールに『2号100mとリーダー4号を1ヒロ』および『3号66mとリーダー5号を1ヒロ』を巻いた際の重量は、どちらも約15g前後と比較的軽量になってます。
キャスト面に関しては、13メタニウムにKTF社のNEOスプールの組み合わせですと、ルアーのウエイトが3/8oz以上あれば非常に硬めのジグロッドであっても、ストレスなく快適にキャストすることができます。
また、ルアーウエイトが乗せやすいレジットデザインのWSC66MLならば、1/4oz程度であっても楽にキャストできます。
私は、キャスト面だけで考えれると13メタニウムとNEOスプールの組み合わせで大変満足してしまっております。
そのため、16メタニウムMGLのMGLスプールの性能に期待できず、購入を止めてしまった経緯がありました。
しかし、KenD様の今回の記事を拝見したら、16メタニウムMGLが欲しくなってしまいました。
次回のブレーキ性能がどのくらい進歩されたかの記事を大変楽しみしております。
アツいコメントありがとうございました!
16メタニウムは巻き心地事態がだいぶ変わったと感じていましたが、まさかウォームシャフトまで手を加えられているとは気づきませんでした。
(勉強になりました)
さて本題の夢屋ベイトフィネススプールとの比較ですが、「1/4ozクラスの軽量ルアーであれば」圧倒的に夢屋BFSスプールの勝ちだと思います。
MGLでも、特に比重の軽いPEを組み合わせるなら、1/4ozクラスを投げられなくはありません。
ただし快適かと言われれば否で、あくまでも3/8oz以上のバーサタイルリールと考えた方が良いと思います。
余談ですが軽量バーサタイルとしての夢屋BFSスプールの性能は本当に素晴らしくて、これがあるという事自体が、13メタニウムが16MGLに対して持っている数少ないアドバンテージの1つだと考えています。
KenD様
ご丁寧なコメントありがとうございます。
確かに、16MGLはバーサタイルリールとして考えるべきですね。
とても参考になりました。
現時点で、16MGL用の夢屋BFSスプールが発売されていないのが、大変残念に思えてしまいます。
最近、KTF社から16MGL用のバーサタイルフィネススプールが発売されましたが、純正ブレーキユニットの取り外しが少々難しいそうに思っておりました。
話が逸れてしまい申し訳ありませんが、今年にシマノから16炎月100PGという16スコーピオン70をベースにブラス製のマイクロモジュールギアを搭載されたリールが発売されております。
この16炎月100PGは、フレームはアルミ製ですが、両側の本体が樹脂製であるため、リール本体の剛性および精度があまり良いとは言えません。
そのため、店頭で確認した16炎月100PGの巻き心地は、14カルカッタコンクエストと比較してしまうと劣っておりましたが、店頭販売価格が3万円程度までのリールと比較すると、個人的にはかなり良いと部類に入るのではと思いました。
もし、16炎月100PGに軽量なスプールを組み合わせることができれば、軽量ルアーの巻き物系を快適にできるのではと期待しております。
KenD様は、16炎月100PGを使用した事がありますか?
まさに仰る通りで、16MGL用の夢屋BFSスプールが未発売なのがかなり痛いポイントだと感じています。
KTFのスプールも、ブレーキユニットが課題ですよね・・・。SVSを単体で売ってもらえれば良いのですが。
16炎月についてはすみませんが使用経験がありません。
しかし本当に思うのは、サイドプレートを樹脂にせずフルメタルにしてくれれば良いのに・・・という事です。
コスト的にはさほど変わらないのではと思うのですが、やはり重さを気にするのでしょうかね・・・。
KenD様の仰る通り、リール重量を気にせず、本体がフルメタルボディーのリールを3万円程度の店頭販売価格帯で発売して欲しいと思っております。
実は、昨年のキープキャストの際、シマノのリールエンジニアへ、13メタニウムをフルメタルボディー化して、3号100m程度のライキャパへスプールを浅溝化すれば、バーサタイル性能を兼ね備え、精度があり巻き心地もさらに良くなるため、シマノの強みを前面にアピールできると思うと要望を出しておりました。
その際、シマノのリールエンジニアは、フルメタルボディー化すると重量が重くなってしてしまうと欠点を挙げておりましたが、精度面では最上位機種のアンタレスと大差が無く比較的安価で良いリールになってしまい、結果的にアンタレスが売れなくなってしまい困ると述べておりました。
また、13メタニウムが比較的に軽量なリールの割に、何故かスプールのラインキャパだけが3.5号100mと多い理由については、シマノ(村田氏)の伝統を受け継いでいるという釈然としない回答をいただき、現在のユーザー目線でスプールのラインキャパが決定されていない事が判明し愕然としてしまいました。
根本的に、スプール系が異なるなるので、遠投を重視するタックルにはアンタレス、バーサタイル性を重視するタックルにはフルメタルボディのメタニウムと、ユーザーが用途によりリールを選択するので、アンタレスが売れなくなると事を理由に挙げるのは間違っているのでは?と反論しましたが、残念ながら、シマノの考えは変わりませんでした。
案の定、今年発売された16メタニウムMGLは、フルメタルボディー化されませんでした。(スプールの浅溝化だけは採用されましたが・・・)
最近のリールは、ダイワのTWSの除くと、基本的なリールの構造面に革新的な変化が全くなく、各社の方針が主に軽量・コンパクト化路線になっているため、ロッドと組み合わせた際のバランスが悪化する一方で困っております。
KenD様が以前の記事に書かれた通り、リールはある程度の重量がある方が、全体のタックルバランスは向上すると常に思っております。
シマノさんへのアツい要望、ありがとうございます。
もう1から10まで仰る通りで、もっともっと我々ユーザーの意見をぶつけまくりましょう(笑)!
本当に軽量化についてはその通りで、もういいんですよね、大概で。
それより出来るのですからフルメタルにして剛性を上げて欲しいです。
で、ギヤはもちろんブラス。
アンタレスが売れなくなるのが困るとの事ですが、フルメタルのラインナップが無いからアンタレス・・・を買うわけでは無くて、皆ABUに流れて行っているだけではないかと感じます。
それが販売戦略として本当なら、心から残念としか言いようがありませんね。
コメント失礼します。
確かな経験と確りとした考察、普段より楽しく読ませて頂いております。
このメタニウムMGLの記事も大変興味深く、楽しく読ませて頂いたのですが、1点気になる所があったので失礼ながら書かせて頂きます。
ベアリングの重量を1gと仮定しているとの事ですが、実際ベアリングは結構な重量があります。
例えば、ハンドルノブ等によく使われる4×7×2.5のステンレスベアリングで約3gの重量があります。
メタニウムののスプールベアリングはそれよりも大きいので、更に重いことが想像出来ます、ですので実際は5gほど軽いのではないでしょうか?
>miyaさん
コメントありがとうございました。
えっ、ベアリングってそんなに重かったでしたっけ???失礼いたしました(;^ω^)
外して計ってみたいのですが、工具が無いとピンが外れないのですよね・・・。
失礼いたしました、こちらの勘違いだったようです。
改めて精密秤で測ってみたところ、間違いである事が分かりました。
不適切なコメントをしてしまい、まことに申し訳ありませんでした。
今後も楽しい記事を楽しみにしています。
>miyaさん
とんでもないです、ご指摘ありがたく思っています(^^♪
またお気づきの点がありましたら、色々教えて下さい!